SHIBUYA COSMIC BASKING
直枝政広 スペシャル対談
Vol.3 ゲスト:石塚 淳(台風クラブ


構成・執筆:岡村詩野

――直枝さんは台風クラブをいつごろ知ったのですか?

直枝 ちょうどアルバム『初期の台風クラブ』が出る頃かな。本(秀康)くんとかスカートの澤部(渡)くんとか、みんな騒いでて。で、早速聴いてみたら文句なく「最高!」って。思わずツイートもしちゃったんだよね。

石塚 ありがとうございます。僕、アルバムが出る前に、レーベルの人と飲みながら「誰にアルバムを送ろうか」って相談してたんです。聴いてもらいたいなって人に送るために。その中にもちろん直枝さんも入っていて。てっきり送ったのを聴いてくれたんだと思ったら、そうじゃなくて買ってくれてたという(笑)。余計に嬉しかったですね。

直枝 アナログ盤が欲しかったんだけど、最初のプレスはすぐなくなっちゃったでしょ?

石塚 おかげさまでその後も何回か再プレスしているんです。

直枝 とにかく佇まいがいいんだよね……今っていくつ?

石塚 32です。

直枝 なるほどね……それなりに時間をかけていろんなものを聴いて吸収して、そのたびに出して…ってことを繰り返して、ちょうどいいところにいるんじゃないかなって気がしたんだよね。しかも時代に寄り添わない頑固さもあるような気がして。ギター・バンドとしてとても荒くれたものを出してくるし、もちろん日本語の気持ち良さというか、風通しの良さをフレーズのはしばしに感じることもできたし。「処暑」のPVを観て、イギリスのザ・グリース・バンド(ジョー・コッカーのバック・バンドとして結成された70年代のバンド)みたいだなあって。直感で「これはヘンリー・マッカロク(ザ・グリース・バンドのギタリスト)だ、カッコいいなあ!」って。あのPV、橋の下でライヴをやってるシーンが出てくるでしょ?

石塚 あれ、鴨川べりなんです。出町柳あたりの橋の下で。

直枝 独特な空気を感じるPVなんだよね。サバーバンな空気……見たことのない京都、なんでもない風景の中で、ギター持ってバンドで演奏する、みたいなのがすごくいい。すごく共感持てた。僕らも昔こういうことをやりたかったんだよなって。僕らの「Edo River」って曲のプロモ・ビデオも川の土手で演奏してるんです。あれ、自分たちで手作りした映像なんですけど……なんかその頃を少し思い出したな。

石塚 あれ、ベースのメンバー(山本)が撮ってくれたんです。

直枝 へえ、そうなんだ。ある意味成熟してるんだよね、特に僕ら側から見るとね。

台風クラブ「処暑」


カーネーション「Edo River」


石塚 僕がカーネーションを知ったのは…っていうか、いつのまにか聴くようになってたんですよ。曽我部(恵一)さんがカーネーションを好きだったりしたこともあって……そうやって自分が好きな人たちが繋がってたりもしたんで。で、中古盤屋で見つけては買って「最高!」、また見つけては買って「最高!」って感じで(笑)。最初聴いたのは『a Beautiful Day』(95年)だったかな。メチャクチャ好きで。極上のポップスなんですけど、ロックンロールみたいなのをやる時の“ワルさ”というか“コワさ”みたいなのがあるんですよね。アルバムは違うんですけど、「砂丘にて」(『Velvet Velvet』(09年)収録)とか「極悪やな〜!」って(笑)。カーネーションって身なりとかはバッドボーイズ系ロックとかやってる感じじゃないじゃないですか。

直枝 (笑)

石塚 けど、よほど直枝さんたちの方が怖いっていうか。あと、カーネーションの曲って、例えば「It's a Beautiful Day」とかって普通にポップスとしていい曲じゃないですか。でも、『LIVING/LOVING』(03年)の曲とかってなんども聴くうちにすごい深みを見るところがあるっていうか…。こんなに宇宙が広がってるんや…って気づくんですよね。こういう信頼感のあるバンド、ギター・ポップとかにはあんまりいないんですけどね。

直枝 今、「ポップス」って言葉が出たけど、今の若い世代って、「ポップス」という言葉を当たり前のように使うんだよね。それってどういう意味なんだろう?

石塚 僕が思う「ポップス」っていうのはラジオで聴けるとか…なんですけど、でも、そこばかりいうと、「A/F#m/D/E」みたいな50年代くらいからある循環コードの曲とかになっちゃうじゃないですか。でも、僕が思うのは、そういう聴きやすさを持ちつつも、どこかに「はったり」とか「感染力」とか「儚さ」とかがあるものじゃないかなあと。あと、盤…ディスクを複製してバラまくようなインチキ稼業みたいなところとかも好きで(笑)。

直枝 面白いなあ!

石塚 それだけだと普通に流通している興味のない音楽もそうなっちゃうんですけど。

直枝 そこに隠された世界、入り口があるような感じ?

石塚 そうですね。




直枝 10年、20年前には「ポップス」って言葉をこんなに普通に使ったかな?って最近よく思うんだよね。昔だったら「ロック」って言葉で表現しちゃうようなね。でも、若い世代は「ポップス」って言葉を、こんな文脈で使うんだって気づいたら、すごくすごくいいなあ、面白いなあって思ってね。僕は「ロック」…多様性やその文脈の持つ図太さみたいなものが好きでやってきたんだけどね。

石塚 僕が思うのは、それを内包しているのが「ポップス」やなあと。「ロック」が周りでヘンに使われ過ぎてて、使いたくないって世代なのかもしれないですね。「ラブ」って言い過ぎるとおかしい、みたいな(笑)。カーネーションは…『LIVING/LOVING』とかはそういう意味でも本当に好きですね。

直枝 あれはトリオで録音したアルバムなんですよ。

石塚 それ、あとから知りました。

直枝 トリオって面倒臭いじゃないですか(笑)。でも、「いくぞ!」って時の勢いがとてつもないんだよね。例えば、今でもライヴでトリオでやる曲を1曲目にやっちゃうと、一気に疲れちゃう(笑)。ていうか、気持ちよくなっちゃう。5人から3人になった時はそのへんのコントロールが大変だった。あと、ある程度リフとかフレーズで構成させていかないと、コードべったりで演奏しちゃうともたない。トリオでやるようになってからはそういうことを考えて曲を作ったりするようになったかな。歌いながら、弾きながらを考えないといけないからね。

石塚 僕にいたっては成り行きでしかバンドしたことなくて。狙って3ピースにしたわけでもないんですよ。もともと……20歳くらいの時はヴォーカルが別にいて僕はギターだけだったし、その後結局自分で歌ってギター弾いてやるしかないなあってなって、その後、今のベースのヤマさんとドラムの伊奈くんが一緒にやるようになって…って感じなんです。そうなっちゃった…っていうか。

直枝 どういうのを聴いてきたの?

石塚 録音物だとギターが右左に気持ちよく並んでいるのが好きで。直枝さんのソロ・アルバム『HOPKINS CREEK』の10周年記念盤(デラックス・エディション)で聴いたんですけど、岡村ちゃんのカヴァー(「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」)の直枝さんのギターがヤバすぎて。直枝さん、ギタリストとしてもえげつないなあって(笑)。

直枝 あれ、自分でもコピーするんだけど、難しいんだよ(笑)。

石塚 ブラウンノーズと一緒に……でも宅録なんですよね、あれ。

直枝 そう。こっちは千葉、ブラウンノーズは福島で。ハードディスクのやりとりで作ったから大変だった。ちなみに洋楽はどういうのを聴いているの?

石塚 いやもうつまみ食いで。5、60年代のロックンロール、ガレージ・ロックも好きやし、70年代のパンクも好きやし。カントリー・ロックやスワンプも好きやしブリティッシュ・トラッドみたいなのも好きやし……。一つを全部ファーストから…っていうより聴きたいヤツをバババッって感じ。レコ屋行く時は蓄積されてる自分のウォントリストで買っちゃうからとっちらかっちゃうんですよ。オリジナル盤とかにもあんまりこだわらないし。

直枝 それでいいと思うよ。マトリックスとかにこだわっちゃうと収拾つかなくなっちゃうから(笑)。京都は中古レコード屋多いからいいよね。

石塚 そうですね。いい店多いです。

直枝 歌詞はどういう感じで書いてるの? 何か好きな本とか小説とかがインスピレーションになったり?

石塚 本はもともと好きで。江戸川乱歩の春陽堂から出ている文庫とか。すごい好きですね。あれを1冊ずつ本屋で買って読んだり。

直枝 僕もあれ好き! 中学の時に読んでた! 大正〜昭和の感じ、嫌いじゃないでしょ?

石塚 嫌いじゃないしそれがベースにあって。武者小路実篤のマイナーな短編とか。でも、その上で、松本隆さんの本とかも好きで読んでたら、やっぱりその頃の本をよく読まれていて。

直枝 バンド名って映画(相米慎二監督『台風クラブ』)から?

石塚 そうです。久々にバンドを始めるって時に、思いを込めすぎて意味深な名前をつけるってよりかは、本の背表紙からとってくるくらいの感じがいいなって思って。“オアシス”もポスターの文言からとったっていうし。昔、夜中に映画観たな、あれいい映画やったな…って思い出して。ほんとそんな感じですね。

直枝 3ピースで始めたのも成り行きだったっていうしね。

石塚 そうなんです。最初はベースは違う人だったし、結局うまいこといかなくて、やっぱりバンドって難しいなって思っていた時に、昔一緒にバンドやってた今のベースのヤマさんと再会して。また一緒に遊びに行ったりしてるうちに、ヤマさんも「もう一回バンドやりたいな」ってことで、じゃあってことで…。ほんと、ぜんぶそんな感じなんですよ〜。

直枝 (笑)じゃあ、本(秀康)くんのレーベル、雷音レコードから7インチ・シングルを出したのは? 

石塚 本さんもいきなりメールをもらって、そのあと電話がかかってきて…って感じです(笑)。もちろん、僕は本さんのことは知っていたしファンだったんですけど、きっかけは……京都に昔、“ちぇるしぃ”ってバンドがいて、2000年に解散しちゃったんですけど、その解散ライヴの映像が出てきたので座談会をするから当時の彼らを知ってる人、影響受けた人集まれ!って呼びかけがあったんですね。で、僕とヤマさんもワーってかけつけたんです。そこに毛皮のマリーズ〜ドレスコーズの志磨(遼平)さんも自費でわざわざ京都までやってきて参加したりして。その時の様子がツイッターとかにあがって、それを本さんが見てくれたんです。しかも、たまたまその時僕は雷音レコードのTシャツを着てて(笑)。

直枝 はははははははは! 

石塚 前野健太さんのとか、雷音から出てる7インチ・シングルは買ったりしてたんで、まさか自分たちが雷音から出せるとは思わなくて(「ずる休み」)……本当に嬉しかったですね。

直枝 Tシャツがいいアピールになったわけだ。

石塚 そんな気なかったんですけどね。本さんがそれを見るとも思ってなかったし、僕はただお気に入りのTシャツを着ていたってだけで…。



直枝 東京のバンドとかそういう動きってどうやってキャッチしていたの?

石塚 《ココナッツディスク》吉祥寺店矢島(和義)さんのブログをチェックしてて。スカートとかミツメとかシャムキャッツとかどついたるねんとか、全部、《ココナッツ》のブログで知りました。それで、台風クラブのCDRを作った時にお店に送って。そういうところからですね。スカートの澤部(渡)さんとかは僕らのことをYou Tubeで見つけてくれたみたいです。

直枝 そうやってお店が媒介になるのってすごくいいよね。

石塚 逆に聞きたいんですけど、3ピースの時ってどうやってライヴとかやっていたんですか? 僕ら以外の3ピースって全然わからなくって…。僕らは必死でやってるだけなんですよ。

直枝 僕らが3人だけでやってる時もそうだったよ。まずはとにかく全レパートリーを3人でやってみようってことからスタートして。できる曲、できない曲を確かめたの。と同時に、ギターを変えなきゃダメだってことになって。その時に参考になったのは、アレックス・チルトンの『Loose Shoes Tight Pussy』ってアルバム(00年)。あれを聴いた時に「この音だな!」って直感でピンときて。すぐにヒックスヴィルの中森(泰弘)さんに連絡して「このギターの音を出したいんだけど、これギターの種類なんですか?」って聞いたの。そしたらギブソンのES-225だろうと。じゃあ、それをとにかく手に入れようってことで買って。そういう感じでスタートしたんだよね。でも、レコーディングはともかく、どうにもこうにもトリオでギター鳴らすにはハウリングしちゃってライヴではキツいと。そこで、今度はストラトを借りてアンプをデカいのにしてみた。マーシャルのデカいの。でも、今度は音がデカすぎてね。そんな感じで機材との戦いだったよ。落ち着くまでアンプを3つくらい替えたりしたしね。しかもリフを弾きながら歌わないといけないし、ソロも弾かないといけない。ソロを弾いてる間にゴッソリ音がなくなったらおかしいから、それはじゃあどうしたらいいだろう?とかね。そういうのが本当に大変だった。それまで楽器にあまりお金をかけてなかったんだけど、その頃にかなりいろいろ試したなあ。結果、デラリバ(デラックス・リバーブ)でフルテン(アンプのコントロールツマミを最大値である10にすること)…という環境で直で作れるようになったんだけどね!

石塚 すごい! それ憧れるんですよね〜! どうしてもペダルに頼ってしまうんですよね。

直枝 切り込む感じ、憧れるよね。でももちろん僕もファズとか踏みけどね。そこらへん、台風クラブはどんな感じ? 結構カッチリと決めてる?

石塚 割とそうですね。2、3和音くらいのチョコチョコ動いて、カッティングの位置もわかった状態で歌うっていう。

直枝 わあ〜、すごいな。ギターはSGだよね。アンプは?

石塚 ヤマハのF100です。

直枝 最高! 名器ですよ!(笑)

石塚 そうなんですか! 僕、フェンダーのデラリバとかが好きで、スタジオにあったら絶対に使うんですけど、あれを個人で所有するのはリスキー過ぎて。メンテが大変そうだし、なんかあったらえらいこっちゃだし…。でも、ヤマハのF100に出会って。あれ、壊れないですよね(笑)。

直枝 (京都の)《磔磔》にあるよね。

石塚 ありますね〜。《磔磔》にはF100のヘッドもキャビ(ネット)もあるんですよ。《磔磔》でやらせてもらう時は、自分のヘッドを持ち込んでキャビだけ借りてます。

直枝 アコギは?

石塚 持ってないんですよ。リゾネーターだけ1本持ってるんですけど……だから弾き語りもできないんですよ。今年は弾き語りやるぞ!って思ってたんですけど、まだ動けてなくて…(苦笑)。

直枝 じゃあ、ギタリストで好きな人っていうのは特にはいない?

石塚 左右振り分けててメッチャ好きなんは……ヒックスヴィルとかサニーデイとか、もちろんカーネーション、あと地元(京都)のニプリッツとか。どうしてもバンドで聴くから、海外のナンチャラさんってギタリストが好きです、みたいなのはないんですよ。あ、マシュー・スウィートの『ガールフレンド』のギタリスト(ロバート・クワイン)は好きですね。

直枝 いや、ほら、今度の対バンの時、京都の方はギターが僕だけだから(東京公演は松江潤)、できれば石塚くん、ギターを一緒にやってほしいんだよね。

石塚 マジですか!

直枝 全曲じゃなくても、2、3曲でも。もちろん東京の方も一緒にやりたい。松江くんともどんどん絡んでほしいな。

石塚 でも、大丈夫なんですかね、それで(笑)。

直枝 大丈夫大丈夫! ちなみにバンドとしての目標ってある?

石塚 いい曲頑張って作って、まとまってきたら音源作って、ライヴに行く、みたいな感じですね。逆にカーネーションは……30年、35年やってきたバンド感ってどんな感じなんですか?

直枝 (笑)今は二人体制で、サポート・メンバーに力を借りて、その場でバンドの空間を作る、スティーリー・ダンみたいな感じ。よくあるバンドの結束力とかとは全然違うカタチなんだよね。あまり干渉し合わないけど、現場では集中して一緒にやるって感じ。でも、今はそれがすごく面白い。ただ、始めた頃、まさかこんなに長くやるとは思ってなかったし、そんなつもりもなかったからね〜。今年35周年なんだけど、正直言って、「35年? あれ?」って感じだよ(笑)。



【LIVE INFORMATION】

■京都公演
Helga Press Presents
Groomy Sunday!


2018年4月1日(日)
会場:磔磔(京都)

takutaku_kingjoe_web.JPG
OPEN:17:00 START:18:00
TICKET:前売¥3,800 当日:¥4,300(1ドリンク別)

出演:
カーネーション(サポート:矢部浩志、佐藤優介)
台風クラブ

チケット発売:1月27日(土)10:00〜
Peatix:http://hp0401.peatix.com/

チケットぴあ[Pコード:107-441]
http://ticket.pia.jp/pia/event.ds?eventCd=1803814

e+(イープラス)
【チケット購入ページへのリンク用URL】(発売時に表示されるようになります)
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002250504P0030001

磔磔: 075-351-1321
Helga Press(Helgapress@gmail.com)


CARNATION 35th Anniversary
SHIBUYA COSMIC BASKING 2018 spring

Venue:WWW SHIBUYA

【4月公演】
2018年4月7日(土)
出演:カーネーション
(サポート:矢部浩志、松江潤、佐藤優介)
guest:台風クラブ
DJ:澤部渡(スカート)

OPEN:18:00 START:18:300
TICKET:adv.¥3,800 door¥4,300 (各1ドリンク別)

チケット発売:2018年1月27日(土) 10:00〜
Peatix:http://scbmar.peatix.com/

チケットぴあ[Pコード:105-561]
http://t.pia.jp/
TEL:0570-02-9999

ローソンチケット[Lコード:74979]
販売ページURL:http://l-tike.com/order/?gLcode=74979

e+(イープラス)【チケット購入ページへのリンク用URL】
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002248395P0030001

台風クラブ
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日本語ロックの西日"
うたとギター、ベースにドラム、京都のスリーピースロックバンド。



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