SHIBUYA COSMIC BASKING
直枝政広(カーネーション)スペシャル対談
Vol.1 ゲスト:澤部渡(スカート)


構成・執筆:松永良平

──今回、カーネーションの3ヶ月連続対バン・ライヴ・シリーズ《SHIBUYA COSMIC BASKING 2018 spring》 の第一弾がスカートです。その本番を控えて、あらためてふたりの出会いとか、最近のお互いの活動に対する 思いなどを話していただこうかと思ってます。直枝さんはスカートをいつ最初に認識したんですか?

直枝 澤部くんの存在はディスクユニオンの金野(篤)くんを通じて何となく知ってました。 早くからいろいろ彼の仕事にかかわってたじゃない?  あと豊田(道倫)くんとのイベント《勉強会》にぼくが出たとき(2010年7月10日、Naked Loft)、 そのお手伝いで澤部くんが来ていたんだ。「あ、たぶん(澤部って)この子だな」って思った。

──なかなか印象に残りますよね。

直枝 でも、その前に、電車で澤部くんと会ってるよね?

澤部 そうなんですよ。

直枝 ぼくはべろべろに酔っ払ってて、混雑してる山手線に乗ってたときだったよね。

澤部 「こんなことあるんだ!」って思いました。

直枝 ちょっと話をして、池袋で彼は降りて。そのあとが、豊田くんとのイベントだった。

澤部 なんとなく覚えてるのは、「〈GARDEN CITY LIFE〉のプロモ盤7インチのB面に入ってるリミックスがすごく好きです」 みたいな、すごいマニアックな話をして、大反省しました。

直枝 〈1/2のミッドサマー〉だね。あれ、カラオケじゃなかった? リミックスだった?

──そのファン心理はわかります。一期一会なタイミングで好きなアーティストに出会ったときに、 頭の中でどの質問するか超計算した結果、出て来た質問が、あとで「これかよ!」って思うやつだという(笑)

澤部 そうそう、そうなんですよ(苦笑)

直枝 いや、反省する必要ないよ。すごくいい話じゃん。XTCのアンディ・パートリッジが来日したときに、 何にサインをもらうかすごく考えて、やっぱり『スカイラーキング』を持っていって無理矢理サインしてもらって、 「これでよかったのかな?」とあとで考えたりした。ファンってそういうものですよね。わざとひねっちゃう。

澤部 直枝さんにスカートのCDをお渡ししたのは、曽我部(恵一)さんのイベント (2011年10月20日・下北沢440〈曽我部恵一 presents "shimokitazawa concert" 第十夜・十月〉)で ご一緒したときだったと思います。

直枝 イノトモさんもいて、4組でやったときだよね。覚えてます。

澤部 はい。『エス・オー・エス』でした。

直枝 いわゆる耳に残るメロディ。すごく個性が強い。声が独特だから、 一回聴いたらずっと頭の中で鳴っちゃう。そういう印象でしたね。

澤部 ありがとうございます。

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──親しくなっていったきっかけは何だったんですか?

直枝 いつの間にか、だよね。そうしてるうちにカーネーションのトリビュート・アルバム (『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』2013年)の発起人を澤部くんと (佐藤)優介くんでやってくれることになって。優介くんと出会ったのは、どういう順番だったか覚えてないんだけど。

澤部 その11年のイベントには優介も一緒に出ていたし、 金野さんのところからカメラ=万年筆もファースト(『coup d'Etat』2012年)を出してました。

直枝 何か本当に、いつの間にか、なんですよね。
──今回のライヴ・シリーズで対バンしていくバンドの中では、ここ(カーネーションとスカート)が 一番古くからよく知ってる同士ですしね。

直枝 そうですね。一度一緒にツアーもやってますし。

──去年の東京キネマ倶楽部でのカーネーションのライヴ(2017年11月24日)のときの澤部くんと優介くんの 盛り上がりようは、傍目から見ても引くくらいでしたけど(笑)

澤部 もう、良すぎて、帰りの駅の改札で優介とハグしてから別れましたもん(笑)



──スカートも去年、アルバム『20/20』メジャー・デビューを果たしましたし、 カーネーションも2年連続リリースとなる充実した新作『Suburban Baroque』があって、 お互いに節目でありつつ、新たな更新をしてる時期でもあると思うんです。

直枝 まず、スカートって多作だよね。そのパワーって、意外に周りに影響与えてますよ。 ぼくの中では澤部くんと曽我部くんのふたりが突出してるから。「たくさん書いてるな」という印象があって、 なおかつ、ハズさないうまさがある。それが30歳くらいで迷いなくできてるってことがすばらしい。 自分を振り返ってみても、30歳くらいって迷いっぱなしでね。新しいこと、 何か目立つことをやろうってことばかり考えていて、とっちらかってブレまくりだった時期もあったんだよね。 あと、スカートを見てると、まずリズム隊がいろんな引き出しを持ってるよね。 歌に対しての気持ちが伝わるいいラインを彼らが持ってるんですよ。 反応するのが早いっていうか。まずそこで楽曲が変わるじゃないですか。 ぼくは4人編成って一番難しいと思ってて。スカートは基本コードのカッティングで、 たまにオクターヴでソロを弾くくらい。ギター・ソロに行っててもスコンと穴があくようなやり方じゃなくて、 うまく混ぜるんですよね。その外れない感じが現代的なのかな。 ぼくはやっぱりジミヘン的発想がどっかにあって、スポンと抜けたってギターのレベルをあげたらいいじゃん、 ってなっちゃう。スカートは、そこをあくまで崩さないのがポップス性って言うのかわからないけど、 よくできてるなって思うんですよね。

澤部 ぼくがプレイヤー体質じゃない、というのが一番大きいんですよ。ギター・ソロとか苦手なんですよね。

直枝 いや、弾けたじゃない! カーネーションでも〈たのんだぜベイビー〉とか弾いてたじゃん(笑)

澤部 あれは練習しましたから(笑)。ぼくの場合は、自分の曲でギター・ソロがある必然性が あんまりないと感じるんですよ。じつは、30歳にしてロックがあんまりよくわかってないんですよ。

直枝 つまり、リード・ギターのいない4人編成のバンドってことですよね?  僕は山下達郎さんのバンドって、ゴージャスな編成でありつつも、 本当は本人がカッティングだけでも持つバンドを作ってる気がするんですよ。 ぼくは、澤部くんがそこを見てるんじゃないかと思ってて。

澤部 あー、なるほどー。

直枝 そういう構造をエンターティンメントとして見せるというより、 音楽に絞ってストイックに見せているのがスカートという気がする。 (澤部くんの実家は)板橋でしょ? そこも達郎さんと通じる気がして(笑)

澤部 たしかに(笑)。板橋的なやり方なのかも。

直枝 都会っぽいというかさ。いい下町感。そこがたぶん、やんわりといい感じのポップスにつながってる感じがして、 つい達郎さんと比較しちゃうんですけど。期待してます。本当に。

──スカートの新作『20/20』は、どうでした?

直枝 自信がついてきてるよね、たぶん。 〈視界良好〉という曲を出せるというのは、気持ちが前に出てることじゃないですか。

澤部 そうですね。いまはそういう感じですね。



直枝 ぼくらで言うと『It's A Beautiful Day』(1995年)。 そういう見通しのいい時期ってあるんですよ。それが楽曲に気持ちが出るということ。 「ああ、これはいま明るくてとてもいい」っていう感覚を人に届けようとしている気持ちがちょうどいいところにある気がした。 抜けた感じがする。誰が聴いても迷わない歌詞とメロディを作ろうとしてるんだと思う。「だけど、おれららしくやるよ」っていうね。

澤部 うれしいです。ありがとうございます。

直枝 ライヴを見ても思うけど、メンバーはみんな自由にやってるけど、しっかりと寄り添っている感じがいいなと思うな。

澤部 直枝さんに出ていただいた仙台(2017年12月20日、enn 2nd)は特に手応えのあるいいライヴでした。

直枝 あと、優介くんに「メンバーと普段どんな話してるの?」って聞いたことがあるんだけど、 「だいたい人の悪口ですね」って(笑)。そういうところがいいよね。ちゃんと毒を持ってる(笑)

──佐久間(裕太)くんのツッコミのセンスもすごいですしね。

直枝 漫才聞いてるみたいなんだよね。

澤部 話に対する頭の回転がすごく速いんですよ。

直枝 ベースの清水(瑶志郎)くんは謎だよね。よく中国に行ってる(笑)

澤部 そうそうそうそう(笑)

直枝 おもしろいからツイッターとかチェックしちゃうんだよ。「また行ってるよ!」って(笑)

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──いっぽう、澤部くんもカーネーションの新作『Suburban Baroque』には思いがいっぱいで。

澤部 それこそ、あのアルバムにも「抜けた」感じがしたんです。ストレートにまとまっていて、 密度もあって、一枚のアルバムとしての佇まいが本当にすばらしかった。 カーネーション独特の茶目っ気もあるし、色気もあるし、その中にどこかで枯れた感じがぐっと出ていて。 その枯れた感じっていうのは、今までのカーネーションって、ロック的な部分でもパワーがぐっと押し出されて 「あ、もう何も言えない」みたいな気持ちになるよさもあったんですけど、今回はそうじゃないところでのよさという意味で。 〈夜の森〉だったり、〈VIVRE〉だったり。そういう曲があって、すごくロマンチックで最高なアルバムでした。

──ぼくも〈VIVRE〉は去年聴いたあらゆるロックの中で最高の曲のひとつと思ってます。

澤部 仙台で直枝さんが優介とふたりで〈VIVRE〉をやったんですけど、それが絶品だったんですよ。

直枝 ピアノだけでね。

澤部 直枝さんもギターは弾かずに歌だけでしたね。最高でした……。 曲の構造がむき出しになったところに、サビで直枝さんの声が乗っていくのが最高でした。

直枝 今回は、「これは前にもう歌ったことだよね」とか「この言葉は前に使ったよね」ということさえもう 放し飼いにしてしまって、「今歌うべき歌を作ればいい」と思ったし、結局「今歌うべきもの」しかできなかった。 それが、このアルバムだったんです。個人的にもいろいろなことがあって、生き方と音楽が結びついちゃうのを、 ようやく、というより、初めて感じた時期でした。楽曲だけのことを考えてる時代じゃなくなったんだよね、 たぶん。「生きている」ということが歌うことになっていく。うまく言えないんだけど、わりと「わたくし」な ところがあるアルバムだった。

澤部 そういう中にも〈金魚と浮雲〉みたいな曲もあって。

直枝 ああいうのはね、カーネーションならではだよね。

澤部 ちょっと〈60wはぼくの頭の上で光ってる〉とかの雰囲気も感じますし、オーディオ的な楽しさもあるし、 すごく気持ちよかったです。

直枝 でもね、こういうアルバムっぽいアルバムを作ることができたのもようやくなんですよ。 これ(『Suburban Baroque』)は作るものと聴きたいもの、感じたいもの、すべてがいいバランスになったような気がする。

澤部 かと思えば、昔の〈ビーチで写真〉の頃のような、やばいやつの男の歌になってる〈Girl〉とかもあるじゃないですか。 そういうバランスもめちゃくちゃかっこいいですよ。

直枝 いや、だから、結局基本は変わってないんだよ(笑)。そのクセみたいなものは、もともとあるんだし。澤部くんも時間がないなかでものを作るじゃない? その連続の中でどういうふうに自分を出していくのか、っていうのが本当に作品作りのテーマなので。

澤部 そうですね。そのときそのときで最善を尽くしていくんですけどね。

直枝 ぼくは、これから澤部くんがいったい何十枚アルバムを出していくのかが、楽しみでしょうがないんですよ。

澤部 たくさん作れたらいいんですけど、曲が書けるのかどうか……。

直枝 書けるよ!(笑)



──数年前にも澤部くん、そう言ってましたけど、結局書いてきてますからね。

澤部 そうなんですけどねえ。

直枝 曲はどうやって作ってるの?

澤部 ギターですね。イントロかメロディからできて、ばーっと最後まで行きたい感じでできることもあるんですけど。 ただ、サビからできるってことは、まずないですね。

直枝 最初にリズムを組む?

澤部 いや、組まないです。だからリズムが似ちゃうんです。

直枝 たとえばボイスメモとかで録音するの?

澤部 はい。Aメロのきっかけとか。

直枝 それはぼくもやるな。

澤部 直枝さんはまずリズムを探すんですか?

直枝 うん。まずリズムを組むんですよ。決まった音源があったり、拾ってきた音源を切ったり、古いファイルをリサイクルしたり。そこを超えられたら曲がうまく進むという感じで。メロディーのアイデアはボイスメモとかに録ってて、たまたま良かったものは聴き直して曲にしたりするけど。どちらかというとアレンジが同時に進んでいくような作り方。そのデータを本番でも使う。アナログテープに流して、スタジオで差し替えていくとか。

澤部 ぼくのやり方としては、ギター一本あれば曲が成立する状態にしたい、というのがあって。

直枝 そういう感じするよね。だから、ああいう曲が成立するんだよね。

澤部 だから、スカートの曲がパッと聴くと普通のサウンドなんだけど、何かがいびつだというのは、 意外と曲の持つ責任の重さだったりするのかなと思いますね。昔、ドラムの佐久間さんに言われたんですけど、 「澤部くんの書いてくる曲はやることがないから楽でいい」って。つまり、弾き語りの段階でどういうリズムを入れたらいいか、 すでにわかる、ということだと思うんですけど。そういう意味では、『20/20』でようやくシンプルさからデコラティヴな 方向に行き出したなという意識が自分にはありますね。

直枝 押し引きというか、空間性がだいぶ見えてきてるよね。

澤部 そういう感覚がだんだんわかるようになってきました。パーカッションでシマダボーイが入ったのも大きかったと思います。

直枝 澤部くんなりのリズムがあるからね。そこがより強調されてきた。

──そういえば、前作『CALL』(2016年)のときは、澤部くんはポール・マッカートニーの 『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード』(2005年)でポールとナイジェル・ゴッドリッチが 作った音色を意識していたというエピソードがあるんですよね。

直枝 あれは最高!

澤部 最高です。

直枝 あのアルバムのこと考えると、ぼくも曲ができるんだよね。

澤部 あれはすごいアルバムですよ。ぼくは一昨年くらいまで知らなくて、初めて聴いたとき、 オーディオの前から動けなくなっちゃって。

直枝 〈ジェニー・レン〉を聴くと、曲を作る気持ちになる。あれ、アナログ欲しいよね。

澤部 ぼく、持ってます!

直枝 え? あれ、高いよね?

澤部 はい。でも、見つけちゃったからしょうがないと思って。

直枝 なんかさ、湯浅(学)さんもそうだけど、「レコードの神」憑いてるよね(笑)。

──でも、新作の『20/20』の取材をしたときは、意外にも「今回はそういうモデルにした音源はない」という答えだったんです。 あとになって、それは自分でこうしたいという音像が澤部くんの中ではっきり見えてたからなのかな、とも思いましたけど。

澤部 自分の作ってる音楽と自分が聴いてる音楽との乖離がだんだん出てきててるんです。 『20/20』作ってる前後は、もうずっとトッド・ラングレンのファースト、セカンドばっかり聴いてましたし。

直枝 マジですか!(笑)RUNTだったの? そういう音じゃないな。

澤部 あえて手本を持たずにやってみるのもいいのかなと思って、今回はそうしました。 レコーディングではドラムのテックの方がついてくれたのもよかったです。 直枝さんも以前のインタビューで「ドラムが肝だ」っておっしゃってるのを読んだことも覚えてます。

直枝 ドラムのメーカーは何でもいいんですよ。大事なのはチューニング。矢部(浩志)くんがそうなんですよ。

澤部 ぼく、川本真琴さんのバンドではドラムを叩いてるんですけど、 そのとき矢部さんが参加してるコントロヴァーシャル・スパークと対バンで、 ぼくが矢部さんのチューニングしたドラムを叩くことになったわけです。 叩くとあの音なんですよ。あれはすごく楽しかったし、興奮しました。

──キネマ倶楽部であんなに澤部くんがぶち上がってたのは、矢部さんがドラムだったからという理由もあったかも。

澤部 それはめちゃくちゃありますよ。いいフィルインが入るたびに優介と肩組む、みたいになってましたから!

直枝 それはすごいな(笑)

澤部 ぼくも優介も高橋幸宏さんのドラムが好きで。もともと、大学の後輩として優介が入ってきたときに 「YMO好きな新入生がいる」って聞いて、「どうせ〈ライディーン〉でしょ?」って思ってたわけですよ。

直枝 (爆笑)

──ふたりとも〈ライディーン〉好きって年齢でもないけど(笑)

澤部 ぼくがパソコン室でひとりで〈ロータスラヴ〉聴いてたときに優介が入ってきて、 「ああ、YMOっすね」って言ったんです。そしたら、サビに入る前の印象的なフィルインをふたりで 「ダダッダッダ!」ってハモってたという(笑)。それくらい音楽を聴くポイントがどこかで近いんですよ。

直枝 それは重要だよ。

澤部 フィルインひとつでぶち上がれるという存在はなかなかいないんで、たいせつな仲間です(笑)

直枝 カーネーションの現場でも、エンジニアの原真人くんと優介がふたり仕事をするときは、必ずYMOの話だね。 「ねえ、あれ弾いて?」っていう原くんのリクエストに答えて優介くんがシンセを弾くという(笑)

澤部 やっぱ、優介は音楽が好きなんですよ。それがいいんですよ。ぼくも孤独じゃないなと思います。
──直枝さんから見て、ふた回りくらい下の世代が、そういう音楽に触れてエモく興奮してるさまというのは、どう映るんですか?

直枝 いやもう、ぜんぜんすばらしい。彼らの世代は、ぼくらなんかよりぜんぜん知識があるし、 聴き方が深いですよね。ぼくはYMOはリアルタイムだけど、ちょっとひねくれちゃってたから、 アンディ・パートリッジのソロ・アルバム聴いて、「坂本龍一のライナー最高」とか言ってたほうで。

澤部 あのライナーは最高です。

直枝 彼らは何でも揃ってる時期にいろんな音楽を聴いてガーッと勉強するでしょ。その迷いのなさ、純真さだよね。 ぼくらは小遣いの中で何聴くか選ばなくちゃいけなかったから、あえて除外しなければならない音楽があったし、ひねくれちゃう。

澤部 ぼくも高校の頃にYoutubeは出てきましたけど、お小遣いでレコードを選んで買って聴いてた 最後の世代くらいじゃないかなと思います。ただ時系列じゃないというコンプレックスはどうしてもありますけどね。 リスナーとしての体験として大きめの穴がたくさん空いてるんですよ。

直枝 ボブ・ディランの穴、空いてるでしょ。

澤部 空いてますね。結局まだ(ボブ・ディラン&ザ・バンドの)『地下室』(1976年)しか聴けてない。

直枝 それ、アンディ・パートリッジと一緒だよ(笑)。あの人、あれが一番好きなんだって。

澤部 他のディランのアルバムも何枚か聴いたんですけどよくわからなかったんです。でも『地下室』を聴いたときに、 当時、熱心に聴いてたパラダイス・ガラージ(豊田道倫)とかの感じにじつは近いんじゃないかと思ったんですよ。

──あのアルバムは、ロビー・ロバートソンによるリミックスが相当施されているから、 ある意味オーディオ的なおもしろさもありますしね。

直枝 ディランの『ブートレッグ・シリーズ』(第11集)で出たビッグ・ピンクでのザ・バンドとの本当の音源は、 もっとヨレヨレだし、ダークなんですよ。あれもいいですけどね。

澤部 そういうディランの穴みたいなところをなんとか埋めていくべきなんでしょうか?

直枝 まあ、時間がくれば、ハマるようになるんじゃないかな。でも、澤部くんはリスナーとしても変わってるよね。 ぼくの知らないジャズとか作曲家系とかも聴いてるし。ぼくはロック、ソウル中心なんだけど、 澤部くんはむしろ小西(康陽)くんっぽいというか。

澤部 直枝さんの本(『たましいの下着、宇宙の柳』2007年)の影響もたぶん大きいです。 ぼくは、ディスクガイドとか敢えて買わない派だったんですけど、あの本はあらがえなかったし、 あれを読んでもっといろいろ聴こうと思いましたね。自分もリスナーとしてちゃんと深掘りしないとという意識になったのは 間違いないです。あの本じゃなかったかもしれないですけど、直枝さんがどこかでエリック・カズを紹介していて、買った覚えがあります。

直枝 『カル・デ・サック』(1974年)? 70年代にバーゲンで買って、その聴いた日の夕方の匂いまで覚えてますね。

澤部 ああ〜、やっぱりそういうものですよね! つねづね、そういうレコードに出会いたいと思ってるんですよ。

──ちなみに、直枝さんが最近よく聴いてるのは?

直枝 アレックス・チルトンですね。あらためて凄みを感じてますね。

──澤部くんの最近のブームは?

澤部 よく行くときわ台のレコード屋で、ニール・セダカの60年代のデモとかがすごくいいという話を聞いて、 音源集を買ってみたら、たしかにすごくよかったんですよ。そこから大学時代に聴いていたソフトロックにも また興味が向かってる感じです。

直枝 70年代のセダカもすごくいいんだよ。

澤部 ぼくもそっちから入って、すごくいいと思ってたんですけど、60年代後半に作って発表してないデモみたいなので、 当時のロックを取り入れようとしてる感じとか、感じるものがあるんですよね。

──おもしろいですね。アレックス・チルトン対ニール・セダカ。

直枝 でも、なんか“らしい”なあ(笑)

澤部 なるほどという感じがします(笑)

──せっかくなんで、共演に向けてのなにかアイデアで教えてもいいようなことがあれば。

直枝 澤部くんにはぜひ曲によってはギターを弾いてもらいたいですね。歌も共演で歌ってほしいし。

澤部 ぜひぜひ。あと、お願いがあるんですが、1曲カヴァーをしてもいいですか?

直枝 それはうれしいですね。

澤部 まだ曲は決めてないんですよ。最初は〈オートバイ〉かなと思ったんですけど、メンバーと演奏力が足りないかな……。

直枝 スカスカでもいいと思いますよ。

──『天国と地獄』再現ライヴ(2012年)でひさしぶりに聴きましたけど、最高でしたね。

澤部 あー、あれ最高でしたねー! なので、〈オートバイ〉か、(ごきげんいかが工場長〉か……?

直枝 〈オートバイ〉が合うんじゃない?

澤部 あー、そうですねえ……。パーカッションがいるから華やかにはなるだろうなあ。ちょっとがんばってみます!

直枝 期待してます!


【LIVE INFORMATION】
CARNATION 35th Anniversary
SHIBUYA COSMIC BASKING 2018 spring

Venue:WWW SHIBUYA

【2月公演】
2018年2月19日(月)
出演:カーネーション(直枝政広、大田譲、矢部浩志、松江潤、佐藤優介)
guest:スカート
DJ:松永良平

OPEN:18:45 START:19:30
TICKET:¥3,800 DOOR:\4,300(ドリンク別)

■チケット発売中
・Peatix:http://scbfeb.peatix.com/
※整理番号はプレイガイドより早い番号となります。

・チケットぴあ[Pコード:105-497] http://t.pia.jp/ TEL:0570-02-9999

・ローソンチケット[Lコード:74836] 販売ページURL:http://l-tike.com/order/?gLcode=74836

・e+(イープラス)
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