3月31日
8時起き、見知らぬ漢字の看板が印象的なへんな芝居小屋の夢をみた。古本とカフカ的な何か、ここ数日の記憶の混乱。目覚めれば煙のように消えてゆく。夢は夢としてよくできている。がっつり朝食。実家のテレビは朝から時代劇チャンネル。今日はディスク・ユニオン特典の企画で、また下北沢。自動販売機で酸っぱいドリンク買って飲み干したところで向こうから本秀康くん登場。ふたりでレコード掘り。売り場の雰囲気に馴れるまで時間がかかる。苦戦しつつもなんとかレコード11枚買って取材。担当は妖精の村のIくん。喫茶店へ向かうとその外で電話中のケラとばったり。「このたびはおめでとう」と告げる。おれたちが行こうとしていた店はケラが原稿を書いている店だった。一緒に階段を上り、店内へ。ケラに「昔のカセット作品どうするの?」と聞かれる。そういえばおれのソロ・カセット音源を彼が気に入ってて「ソノシート5枚組とかでナゴムから出そうよ」なんて25年前に言われていたっけなぁ。恥ずかしくてもはや出せないかもなぁ。そこは異様に静かな居心地の良い店だった。おれたちの取材の声がうるさくて仕事中のケラに迷惑かけたかもしれない。昼からはじめたのにもう外は暗い。そのまま飲み。途中、フラッシュ・ディスク・ランチに入ったらJohn Fahey『The Voice of the Turtle』のオリジナル盤(ブックレットが素晴らしい)見つけちゃって、また買う。飲んで飯食って重たいレコードかついで歩く。渋谷駅の京王線から山手線内回りへの乗り換えはとてもきつい。酔いはとっくに醒めていたが眠い。実家で一時間寝てから高速。4月1日、2時。普段は静かな道も、今日はがさつな風体のトラックが恐ろしいほどに連なっている。遠くの敵を威圧するようなまるで無駄な余裕のない走り。道を走れば景気や人の気の流れは露骨にわかる。おそらく相当よくないねこりゃ。最近の移動ポッドキャストは「サイエンス・サイトーク」。脳みその違いか。前例のない仕事をする科学者、技術者、作家たちの話はおしなべておっとり。また、その受け答えにおいては、迷いの無い的確な言葉がズバっとかえってくる。筋の組み立て方がうまいんだなぁ。
今日はFZが夢に出て来ておれのギターを褒めてくれたところで目が醒めた。携帯のメモに忘れずそのことを書いてまた寝る。
3月30日
大井町の牛友チェーンのジャンクなカレーが食いたくなったので迷わずGO!今は牛八という名で相変わらず狭く細い店で営業中。やはり独特な味でうまい。辛口の中盛りとサラダ。大井町~自由が丘~渋谷。山手線に乗るよりも、この遠回りのコースが好きだ。今日は取材日。ミュージック・シェルフを終え、タワレコでディラン『ブロンド・オン・ブロンド』のBlu-specCDを購入。このアルバムはたして何枚もっているのだろうか...。下北沢へ移動。Quipとナタリーも濃い内容。早いうちからゆるずとスタッフと下北沢を飲み歩く。年齢的にもそろそろ節目。早めに煙草は止めようと考える。珍しく終電前に移動。2時に寝て8時起き、みたいな。ここにきて突然、早寝早起きになっちまった。
3月29日
今日もほぼ寝ずに朝7時半起き。Sおじさんの一周忌法要で両親と奥戸へ。晴天。35年ぶりのおじさんの家。この辺りは昔は畑だらけだった。中川の土手が懐かしい。泊まりに来ると自転車の後ろにのせてもらって銭湯に行ったっけなぁ。真っ昼間からビール三杯。総武線に乗ってお茶の水。ディスク・ユニオンで大山甲日さんとのトーク。喫茶店での打ち合せ時、大山さんが今書かれている本の話を聞く。その熱情にいたく感激、言葉がない。あの『大ザッパ論』だって何十年分の仕事の集積。読み込むにもそれなりの時間はかけなきゃ。さて、お客さんたくさん集まっていただき心より感謝。とても貴重な時間だった。大山さんの生の話を聞けてザッパ・ファンのみなさんはうれしかったはず。ドゥイージル・ザッパのライヴは来週。心底楽しいので是非行くべき。終ってスタッフと飯。飲み。そして高円寺「コクテイル」へ岡崎武志さんに会いに。
BGM : Frank Zappa『Bongo Fury』
3月28日
宮尾しげを「孫悟空」(講談社漫画文庫)が届く。生まれてはじめて手にした漫画は謎の「孫悟空」の本だった。それが杉浦茂の『西遊記』だったのか、もしくは手塚だったのかはわからない。おれは昭和34年生まれで、つまり2歳とか3歳の頃にそれを毎日のように眺めていたわけだから、自分で選んだのではなくておそらくだれかから譲り受けた本だったはず。後に小屋に押し込められ雨ざらしになったが、光文社カッパブックスの『鉄腕アトム』や『鉄人28号』共々ぼろぼろになって一緒に捨てられた(うち何冊かは保護してある)。記憶の果てにはバーンと岩から飛び出す猿の幻だけが残っている。宮尾しげをという可能性はどうなのかと、今回、その復刻本を購入。見覚えのある場面もあるんだけれど...どうかな。でも絵心があってとてもかわいい作品だ。おれがファンクラブの会報で漫画(「やめておくれ劇場 ゆるずくん」)を描く時の変な建物や空虚な地平線の風景がよく似ているのでそこはびっくりしたが、しかし記憶が遠すぎて謎は謎のまま。やっぱりSFの基本はこれだよなと、久しぶりに弓館小鰐『西遊記』(改造社)もぱらっと。それはやたらとユーモアがあって、キレのいい文章なのだ。