2009年8月アーカイブ

ナオエのドンキー日記 2009 8月

 こんにちは。ついに50歳になりました。そんな今年の8月も夏らしい夏を満喫できず、耳鼻BOXのブックレット校正とカーネーションの新作レコーディングに明け暮れました。レコーディングも無事に作業はすすみ、あとは歌入れを残すのみ。最高のアルバムになります。おたのしみに。さて、9月4日は新宿ロフト・プラスワンで耳鼻咽喉科Anthology Box『偉大(はずかしく)なる2年』発売記念イヴェント。貴重な音源や映像を楽しみながら幻のバンド耳鼻咽喉科とは何だったかをあらためて今考えてみたいと思います。ゲストにケラリーノ・サンドロヴィッチ氏をお迎えします。何人かメンバーも遊びに来てくれそうだし、リラックスしながら飲み、笑い転げるイヴェントになるでしょう。是非ともご参加ください。詳細はこちら。当日、渾身のBOXも先行発売されます(これまたレアな特典CD付)。もうひとつ、9月12日のリキッド・ルーム『Eternal September』(withスネオヘアー)もお楽しみに。新曲もやっちゃいますので、どうぞよろしく。


8月26日
 いやはやよく寝た。起きたら50年前に生まれ落ちた時の時間だったので妙な感じ。柏のタワレコで生誕50年記念に、今日発売のボブ・ディラン『フリーホイーリン』Blu-spec盤を地味に購入。ついでに50%引きの棚から買いのがしを3枚拾う。ボンゾ・ドッグの再結成盤、ポール・ウェラー『Wild Wood』のデラックス・エディション、ヘンリー・マカロック『Poor Man's Moon』も。電車に乗っていたらゆるずから携帯に「おめでとう、ついに50だね : まだ40代の若者より」というメッセージが届いた。え?よく憶えているなぁ、こんなことする奴だったかなぁと、ちょっと不思議に思った。夜は代々木のビール屋さんで仲間たち主催の誕生日会。当たり前のように普通に飲んでいたのだが途中で思わぬプレゼントが渡されてびっくり(写真)。表が南海ホークスのNHマーク風にMN(名前のイニシャル)。裏はMASAHIRO NAOEのネームとその「背番号50」を刻まれた緑色の特注ピック。あの赤いテレキャスターを作ったおれのギターの神、平石くんと女社長の横尾が中心になって前々からこの企画を練っていたらしい。しかも、プロのデザイナー(会報デザインの内田さん)をたてて制作という念のいれよう。有志たち(ゆるずも参加)が秘密裏に動いてくれていたそうで、泣かせやがる。感動してその後、貧血になったほどだ。感謝、感謝。さらに事務所にはファンの皆さんからいろいろと、実家にも知人たちから素晴らしい花束が届いて、何ともあたたかい誕生日となった。みなさんどうもありがとう。50歳だからこそ、その分、強い音楽を届けますよ。セイリン・シューズへ移動し飲み、始発まで時間があったので簡単な食い物屋でワイン。鮭茶漬けであっさりとシメ。


 

8月25日
 萩原茂さんのご好意で関口直人さん、福島清さんと横尾と共に天沼にお住まいの徳廣睦子さんを訪ねる。家の玄関には今もその兄「上林暁」の表札がかかっている。作家が寝ていたという部屋でお寿司をつまむ。貴重なお話や資料を拝見。じつは睦子さんにお話したいことがひとつあったにもかかわらず、今日はどうしても言えなかった。まだこちらの心の準備が整っていないようだ。帰り際、『兄の左手』に署名をお願いした。関口さんが「今日は8月25日ですよ」というそばから睦子さんは「8月26日」と書かれた。それは明日のおれの誕生日なのであった。先にいらしていた関口洋子さん(直人さんのお母様)も一緒に駅をめざす。後ろを振り返ると睦子さんがずっと見送ってくださっている。もうすぐ移転するという荻窪駅前の闇市風の飲み屋さん(50年前から営業されていたらしい)でみなさんとビール。その前からかなりいいペースで何杯も飲んでいたけれど酔いはすうっと消えた。夢の中にずっといたような不思議な晩だった。24時を廻ったのはたしか山手線の中だった。今日50歳になる。

8月24日
 かなり寝て、起きたら腰が重い。うーむ、誕生日近くはたいてい調子がおかしいものだ。なかなか眼が醒めない感じで調子が出ぬまま夜、コンビニまで走っていってリポビタンDを買って飲む。こういう時は無理に上げる強い物ではなく、一番安いので丁度いい。つまり歌入れなのである。気が散るので鼻クリーンしたりタラコのおにぎり食ったり。歌っているうちに身体全体の堅さが気にならなくなって集中。前のテイクは捨て、今日あらためて3テイクをキープして送信。そういや急に秋めいて静かだ。夜になるとコオロギが鳴く。

8月23日
 鈴木家のお父上のお通夜へ。京浜蒲田からうっかり快速特急に乗ってしまったら降りたい駅を通り越して羽田空港まで行ってしまった。各駅に乗り換え、目的の駅まで戻る。...言葉にならないのだ。棺の前で関口直人さんと並んで一緒にお父さんにお別れをして、博文さんと少しお話ししながらお寿司とビールをいただく。品川まで出て駅前で23時まで飲む。下りの急行に乗ったら眠ってしまい、ホームの広い地下駅で眼が覚めた。また羽田空港だった。今日は何度も式場の近くを迷ったり、行ったり来たりした。実家で4時間寝て、すいとんと厚揚げと枝豆を食べる。夏はうどん粉の具合がいいと母が言った。

8月22日
 昨日から歌入れ開始するも、どこか気分が落ち着かなくて納得いかず。超寝不足のまま代官山の美容院。渋谷から半蔵門線に乗って錦糸町。鼻をひくひくさせてみても古本屋の匂いはなし。喫茶店とヨドバシで時間をつぶし新小岩へ。いとこの会合。居酒屋でビールを5杯。ちょっと早い誕生日記念でネーム入りのケーキも出た。ヤマジュンからは『不思議惑星キンザザ』の中古DVDと懐かしい怪獣カード(東映動画の「サイボーグ009」も混入)をいただく。気合いを込めてBIG STARのRhinoからの強力なベスト盤やRhino HandmadeのChris Bell、お守りとしての山下洋輔トリオをいさぎよくクリック。

8月19日
 平和島。バンド・レコーディングの最終日。今回はスピーディ、しかもその内容が濃い。まずストリングスのダビング。大野さんからご紹介をうけたショーロクラブ沢田穣治さんアレンジ。Violin, Viola, Cello。女子3人。スタジオは華やか。中原さんのパーカッションのダビング、おれのギターのダビングを終え、シュンちゃん登場。今回、最終のベーシック録音に突入。デモがあっても現場で雰囲気をがらりと変える作業がスリリング。残すは歌のみ。

 

8月17日
 平和島でレコーディング。ダビング日。ドブロ、12弦ギター、E.ギター等のダビング。データの移植等。毎度恒例の深夜のファミレスで耳鼻の校正、最終作業。

8月16日
 外環すいすい。西荻で中原さんを迎えてプリプロ。19日に録音する新曲を確認。飲み屋にて揚げたてえびせんをつまみつつ、ゆるずと横尾とミーティング(おれはウーロン茶)。空がきれいな夜。

8月15日
 生誕50年へ向けてのカウントダウン。夕方、飲み屋風情の餃子屋さんに入り生ビールと定食を注文し、TVで全然おもしろくないバレーボールの試合を見ていたらしばらくして焼きたての4本のバナナのような巨大な餃子が出て来た。おばちゃんが「うちはじめてですよね?熱いですよ、食べやすく半分に切りますか?」と唐突に聞くから「あ、はぁ」と適当な返事をすると鋏を持ってきて餃子をジョキジョキ切りはじめた。その断面のシャープさにしばし唖然となった。しかしその餃子も味噌汁も含め出来たてのくせにやけにぬるく、がっかり。飯も食いきれず。「まぁこんなもんか」と計算し金を出すと店主は伝票を見つめたまま固まって押し黙っている。どうしたのか?と問うと「計算してせっかく出してくれたので...消費税はサービスします」とわけのわからないことを言う。
BGM : The Monochrome Set『Strange Boutique』

8月14日
 引き続き平和島。ファンクラブ限定のキネマの2枚組ライヴCDが完成。これは通し番号付きで、0001番を貰う(おれは0002番でいいと言ったんだけども)。耳鼻ブックレットの色校もあがる。あのあわただしかった地獄の作業がここまできた。今日はドラムスの宮田繁男さんとキーボード奥野真哉くんをゲストに迎えベーシック2曲とダビング。連日すげぇセッション。迷いなくとんでもないトラックが生まれる。宮田さんには「いい曲だよね。曲がいいから、何をどうやってもいいんだよ」と褒められた。彼と出会ったのは20年前、お互いが松尾清憲さんのバック・バンドにいた時。おれはコーラスとヴォコーダー担当だった。ソウルの名オムニバス『Souled Out !』をずっと借りたままだ。あのLPには相当影響を受けている。夕食は生姜焼定食。奥野くん居残りで激しくプレイ。8月はあっという間でもう半月がたった。今日もヤマジュンがカメラ。戸越まで送る。連日、山下洋輔トリオ(それも同じアルバムばかり)しか聴けない。緻密な現場作業が続く中、あのはちゃめちゃな音を浴びるとなんか頭がすっきりするのであった。

8月13日
 ぼたもち買って実家。珍しく眠れず3時間横になっただけ。そのまま平和島でレコーディング。今日からヤマジュンがカメラをずっと廻す。シュンちゃん登場。大量の楽器ダビング(チューブラベルもあり!)と2曲のベーシック。SMA冨永くんが久々にスタジオを訪問してくれた。夕食はたまには中華と、「最近、チャーハン運がない」というヤマジュンは五目チャーハンに挑戦。しかしおれが頼んだ牛肉丼が予想外に鶏ガラ系のあんかけスープでびとびとだったので(まだ鶏ガラスープだけはやめている)それと交換してくれたのだが、激マズで口中が塩っ気で痺れた。あの男、完全にチャーハンに見放されている。シュンちゃんは気絶一歩手前までがんばってくれた。おれもへとへとだが例によってファミレスでさらなる校正とミーティング。

8月11日
 台風は少しそれた。早朝、目眩。と思ったら地震。ついに...と思った。CD棚が揺れている。押えようかどうしようか考えながらただ見ていた。2002年の力作、宮崎貴士『少太陽』とユニオン金野のお中元(山下洋輔のポスター等)に入っていた図書館『図書館の新世界』サンプルCD-Rを聴く。めちゃくちゃいいなぁ、これ。泣きそう。今日は晴れ。でも涼しい。

8月10日
 横尾のがんばりでブックレット入稿を終える。実家でたんまり寝た。なんぼ寝ても寝られる。次なるレコーディング用の楽曲ファイルのまとめ、資料をメンバーに送信。譜面をふたつ書き、カーネーション新譜受注書へのコメントと、紆余曲折あったがバンブルビーから何年がかりかでようやくでる狩野幸子(そのデヴュー作『Skyline 77』はなんと5枚組の大傑作!これマジでやばいのだ!)へのコメントを書き送信。

8月9日
 2時間半睡眠で平和島バッファロー・ドーターの大野さん登場。「Willow in Space」に何種類もの楽器をダビング。途方もなく素晴らしい仕事。生姜焼き定食の夕食後はおれのダビングの嵐。チェレスタ、足踏みオルガン、ピアノ、ギター、グロッケン。ピアノ録音中、大きな揺れ。演奏後に「...地震」という声が録音された。昨日と同じく深夜のファミレスでブックレットの校正作業。佳境。

8月8日
 BGMはもちろん山下洋輔トリオ。それくらい脳みそはテンパっている。編集作業は延々続いたまま。3時間睡眠で平和島でレコーディング。2曲のベーシックとダビング、ばっちり!夕食はまたカツカレー。深夜のファミレスでブックレットの校正作業。

8月5日
 ミーティング、タワレコで山下洋輔トリオ『Dancing古事記』『ミナのセカンドテーマ』の紙ジャケを衝動的に購入。美容院、ブックレットの校正。全曲解説の執筆。

8月3日
 日々、耳鼻咽喉科ブックレット入稿に向けての編集作業。対談の校正。内容が膨大すぎて頭がおかしくなりそう。DVD編集の入りが遅くなり、時間がうまく空いたので原宿で大友良英の展覧会を観る。放置された音。その静寂とノイズの気持ち良さ。代官山にてDVD編集。

8月1日
 重いギターケースかついで赤坂グラフィティ。途中でアイスコーヒーとサンドウィッチを買う。元コロムビアの町田くんは原マスミさんのスタッフで久しぶりに会った。リハ終えて、喫茶店でコーヒーを飲んでいるころから身体の冷えとだるさを感じる。左手も冷たいし、全体に貧血っぽいというか。楽屋で背中を軽くマッサージしてもらったり指先を温めていたら全体がほかほかしてきた。20年ぶりにジョイントの原さんは独自のユーモアと、こねて練りまくるという脳髄に染み入るシンプルな言葉のインパクトが永遠。おれは意外な曲を用意「Planet Radio」「1/2のミッドサマー」。前者はモナでの『巌流島』以来。おそらく弾き語りでは二度目くらい。後者はあまりやった記憶がないのだがどうだろう。今日は「Lovers & Sisters」と「ダイアモンド・ベイ」の出来がよかったかも。ギターは原さんにも「良い音」と褒められた。現場の打ち上げでは原さんや本秀康くん、ユニヴァーサル原田さんらと楽しくおしゃべり。ファミレスに移動し、ハンバーグ食べつつ、コロムビア秋元(当時のカーネーションの担当者)とスタッフで3時間ほどあれやこれやとミーティング。その後、事務所でビール飲みながらスタッフたちの残務仕事っぷりをぼーっと眺める。耳鼻BOXの入校に向けてかなりてんぱっている。おれも今から書かなきゃいけない原稿がいくつかあるのだ。結局、朝6時過ぎに電車に乗る。






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直枝政広
カーネーションのバンマス

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New Maxi Single 『ジェイソン』
2009.4.15 release


『宇宙の柳、たましいの下着』
直枝 政広


『HOPKINS CREEK』
直枝 政広