About RAM Information Self liner notes Interview Sample

このアルバムは、ゲストシンガー/プレイヤーの皆さんをはじめ、関わってくださったすべての方々のヘルプなくしては存在し得なかった作品でございます。
私の夢を叶えてくれた皆さまに、そして聴いてくれた皆さまに、深く感謝いたします。
- 矢部浩志 -   

01. Mother Mainframe
02. LIGHT MUSIC ULTIMATE
03. 僕の頭はF-WORD
  (Feat. 安藤裕子)
04. Surfergirls & Heavenly Reverb
05. Microsleep I
06. Silent Sun
07. Is My Life Shit?
08. RED CHERRY & STRAWBERRY
  (Feat. 鈴木祥子)
09. Random Access Melody
10. ストーリーズ
  (Feat. 武田カオリ)
11. Microsleep II
12. Frozen Jam
13. Logic Mushroom
14. HAPPY BIRTHDAY
  (Feat. 武田カオリ)
01. Mother Mainframe

オープニングのご挨拶的なトラック。何が起きても不思議ではない、ナンセンス・ワールドへの入り口のように感じてもらえたら本望です。このMother Mainframeというおばさんが、このアルバムの案内役というかナレーション担当。「メインフレーム」は、辞書によれば「大型凡用コンピューター」のこと。



02. LIGHT MUSIC ULTIMATE

タイトルは「究極の軽音楽」。曲の制作よりもタイトル考える方が時間かかったかもしれません。出てくるメロディがいちいちムード音楽っぽいので、このようなタイトルに。作曲、演奏、編集、ミックスの全行程がシームレスに同時進行という、ミューズメント式楽曲制作法が如実に表れたトラック。「ミューズメントのテーマ」みたいなものか。



03. 僕の頭はF-WORD

お待ちかね、作詞/ヴォーカルに「ねえやん」こと安藤裕子さんを迎えてお送りするディスコ・クラシックなナンバーです。「怒り」を表現した歌は世に数多あれど、「プッツンする寸前の極限状態」をポワ〜ンと描いた安藤さん、さすがの才気爆発ぶりです。そしてそれが間奏のバカバカしい展開に強烈な諧謔味を与えてくれています。安藤さんは以前「音楽のこと何にも知らないんです」と述べていましたが、この脱力感と野蛮さを併せ持った歌詞とヴォーカルを聴くにつけ、彼女は「ポップであること」の何たるかを知識ではなく本能でわかっている人なのだとあらためて痛感します。要するに早い話が、すんげーヤバいですこの歌。「F-WORD」という言葉をポップ・ソングのタイトルに冠した偉業も、後世に末永く語り継がれることでしょう。おかげで史上空前な感じのメロウ・ダンサーになりました。ねえやん、本当にありがとう。ミッド70'sの匂いプンプンなストリングスがこだわりポイント。



04. Surfergirls & Heavenly Reverb

夏とか海とかはからっきしダメなくせに、何故かサーフ・ミュージックの雰囲気って昔から好きなのです。水着のお姉さんたちも大好きです。そんな私の脳内妄想サーフ・インスト。ベタ過ぎて逆に痛快、ぐらいの感じを徹底的に追求しました。ギタリストとして参加していただいた萩原健太さんによる熟年のダンディズム溢れるエレキと、電撃シンセ・ベースのクロスオーヴァーが快感です。皆さまの夏を無意味に盛り上げる一曲になれば幸いです。



05. Microsleep I

ではここでCMです、という感じでインタールード。タイトルはたまたま辞書で見つけた言葉で、意味は「瞬間的意識喪失」。80秒間でどれだけ遠くへ行って戻って来れるかに挑戦。



06. Silent Sun

何となくここから第二部という感じ。これは4年前に、娘を授かった幸福感から生まれた一曲。自分で思うに、70年代初頭にロック産業の繁栄とともに絶滅していったタイプの音楽、いわゆる「軽音楽」ですね、そういった音楽からの刷り込みが私の中では大きいみたいです。で、幼少時代だったその頃の記憶をたどると、決まってそこは無声映画のように音のない、平和で穏やかな世界なのであります。タイトルはそんな流れでつけました。ゲストのヴォーカルおよびギターの録音エンジニアとして今回お世話になった高橋健太郎さんのギター・コレクションの中から、この曲ではエレキ・シタールやドブロ・ギターを使うことが出来まして、良い味出ました。鈴木祥子さんがこの曲を評して「どことなくジョー・ウォルシュ(注1)っぽくて素敵」と言ってくれて光栄でした。言われてみれば確かに、カリフォルニア郊外の町の夕暮れ的な風情も。

(注1)ジョー・ウォルシュ:イーグルスのギタリスト。スライドギターの名手。ソロアーティストとしても多数の名作を残している。外見のイメージに反して意外にメロウで洗練された作風。



07. Is My Life Shit?

プログレッシヴ・ゴスペル(?)なトラックに様々な喋り声をコラージュしたものですが、数年前、娘の誕生、母親との死別をごく短い間に経験しまして、人の命というものの意味について、あるいは希望や絶望について、その他もろもろ、私のちんけな脳みそで思いめぐらせた答えの出ないあれこれが噴出したものと思われます。長見順さんのマダム・ギターとスペイシーなシンセサイザーが絡むアウトロが、我ながら悶絶ポイント。アナログ盤的には、ここでA面終了な感じ。



08. RED CHERRY & STRAWBERRY

日本が誇るポップ・クイーン、鈴木祥子さんの作詞/ヴォーカルでお送りする妄想洋楽ヒットナンバー。1979年ビルボードチャート第7位ぐらいの感じを目指しました。「メカニカルなサウンドに乗って謎の外人ポップ・アイドルに扮して歌う鈴木祥子」という、何と言うかこう「フェイクな感じ」が私のねらい所だったのですが、祥子さんもそれをノリノリで楽しんでくれて、カラフルなリリックとヴォーカルワークで応えてくれました。この英語の詞のキャッチーさたるや、我が4歳児の娘もすぐに真似して歌ってたほどです(詞に出てくる「THE RULES」というのは、アメリカ人著者による有名な恋愛指南本、との事)。そして彼女がこのCSN&YもQUEENも腰を抜かす驚異のコーラスワークを一人多重録音していく様はまさにPOPの女神な感じで、後光が差しておりました。祥子さん、本当にありがとう。ポップ・ミュージックというものがもたらす喜びに溢れたトラックになりました。



09. Random Access Melody

これは「ひとくちコラム」みたいなものでしょうか。Mother Mainframeさんがミューズメント式楽曲制作法について解説しています。2分程度の曲(これを「曲」と言っていいのかわからないけど)ですが、アルバム中もっとも制作時間を費やしたトラック。もっともその大半は、ナレーション作成のために辞書や翻訳のサイトを凝視していた時間なわけですが。



10. ストーリーズ

武田カオリ嬢の国宝級ヴォイス、私めのレイ・パーカーJrばりのリズム・ギター、そこにマダム・ギター長見順さんがネットリと絡む3Pプレイにてお送りする極上クロスオーヴァー・イレブン系ナンバー。メロディが何となくエンニオ・モリコーネ(注2)っぽいような自覚症状があります。ここでは二人の美女がゲストということで「美女を(無理やり)はべらす」というこのプロジェクトの第一コンセプトが特に色濃く表れた一曲。二日酔いのままキメてくれたこの長見さんのマダム・ギター、これはもう1975年あたりのニューヨーク録音にしか聴こえませんです。デヴィッド・T・ウォーカーやエリック・ゲイルと並 び称されて然るべきプレイヤーでしょう。つってもマダムは「誰それ?」って言いそうですが。そして、お母さんになったばかりの多忙な身にもかかわらず、世にも美しいスピリチュアルな歌詞と、歴史に残る名唱を提供してくれたカオリ嬢、本当にありがとう。

(注2)エンニオ・モリコーネ:映画音楽の巨匠。「荒野の用心棒」「ニュー・シネマ・パラダイス」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「遊星からの物体X」他、450本以上の作品がある。



11. Microsleep II

再びインタールードを挟みましてここから第三部。申し遅れましたがこのアルバム、3パートに分かれてます。という事にしておくと、何となく内容が濃いような気がしてお得な感じがしませんか。音楽にしろグラフィックにしろ、私はつくづくこういうコラージュ遊びが大好きでして、無関係なモノ同士が偶然にハマった時の快感は格別です。ここでMother Mainframeが喋っているのは、ある有名なハリウッド映画の台詞の引用です。



12. Frozen Jam

そもそもは、エレクトーン(30年ほど前の)一台でやってる感じのインストという発想から始まり、いろいろと紆余曲折あった末に出来たもの。電子音楽のようでジャズのようでプログレのようでどれでもない、昔のようで未来のようで何時でもない、未知の世界の音楽が出来まして我ながら相当気に入っております。バカげた事とは知りつつもプログラミングの限界に挑戦した「仮想インプロ・バトル」も楽しんでもらえたら幸いです。



13. Logic Mushroom

肥大化と劣化の道をひた走る音楽産業(フィクションです)へのレクイエム。ならびにエンディングのご挨拶です。この曲からラストの「HAPPY〜」への流れは、音楽的には共通点はありませんが、在り方として何となく「サージェント・ペパーズ」のラスト「Reprise」〜「A Day In The Life」の流れに通じる何かがあるような気がして、一人勝手に悦に浸っておる次第です。



14. HAPPY BIRTHDAY

何だかんだ言ってもラストは乙女心なラブソングで締めるところがミューズメント流の男気でございます。曲を作ったのは4〜5年前で、バカラックの「小さな願い」とか、「サザエさん」のエンディング・テーマなどで聴かれるようなボサノバ系8ビートのグルーヴを基盤にして出来た曲。当初は、大阪万博が開かれた1970年頃の輝かしい時代に思いを馳せるレトロ・フューチャー・インストという方向性でしたが、安土メイさんによるシンプルで儚げな歌詞と、武田カオリ嬢の絶妙な温度感のヴォーカル、総勢16名のコーラス隊を得て、期せずして昭和40年代歌謡ポップス感のある、ナウでヤングな味わいが出ました。あえて例えますと、「涙をこえて(注3)」にどこか通じるテイスト。カオリ嬢がこういう曲を歌うというのも、特にTICAでお馴染みの方にはかなりの衝撃なのではと思います。長い間大切にあっためてきた曲なので、最高の着地点に落とし込むことが出来て幸せです。カオリ嬢、安土さん、コーラスを歌ってくれた裕子ねえやん、祥子さん、パーティ・ピープルの皆さんと子供達、心から感謝いたします。

(注3)「涙をこえて」:中村八大作曲。1970年〜74年にNHK総合で放送された音楽番組「ステージ101」から生まれたヒット曲。小中学校で歌われる合唱曲、卒業式の定番曲として親しまれている。



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